がん治療・療養中であった女優の岡江久美子さんが新型コロナウイルスによる肺炎で亡くなられました。心からご冥福をお祈りいたします。
がん患者の皆さんにはこの件を受け動揺されておられる方も多いかと思います。とりわけ、「乳がん手術とその後の放射線治療により免疫力が低下していたのが重症化した原因ではないか」といったような報道がなされたことは、今まさに放射線治療を受けておられる患者の皆さんや、これから放射線治療を始めようとされている皆さんに大きな不安と動揺を与えたのではないかと推察いたします。
この件に関しては、公益社団法人日本放射線腫瘍学会からも声明(https://www.jastro.or.jp/customer/)が発せられたように「早期乳がん手術後に行われる放射線治療は、体への侵襲が少なく、免疫機能の低下はほとんどありません。」。もちろん感染症予防対策は徹底する必要はありますが、どうか過剰な不安を抱かないでいただければと思います。
放射線というと、今なお「怖い」というイメージが先行しますが、放射線治療は、本来、体への負担が少ない治療法で、がんを治療しながらがんの周りの正常組織の機能や形態を温存できるのが特長であり、一般的な放射線治療によって、体の免疫力が大きく低下するようなことはほとんどありません。
岡江さんに関する報道で、不安を感じている方々もおられると思いますが、放射線治療専門医をはじめとしたスタッフが適切に対応すれば、まず問題がないことをご理解頂き、それぞれの主治医のご指示のもとで、引き続き安心して治療を受けて頂きたいと思います。
一方で、がんをはじめ様々な基礎疾患をお持ちの患者さんにとって、新型コロナウイルス感染症はやはりとても恐ろしい、やっかいな疾患であることは間違いありません。なお一層感染予防にご留意ください。そして、その上で、現在のように感染症が拡大していく中で、治療継続等の不安や悩みがある時は,どうかご自身で抱え込まず、主治医の先生方や各がん診療連携拠点病院にある「がん相談支援センター」(http://www.pref.hiroshima.lg.jp/site/gan-net/kyousei-soudan-ichiran.html)にご相談ください。
広島がん高精度治療センターをはじめ県内で放射線治療を行っている医療機関では、これからもがん患者の皆さんへ最先端の放射線治療を提供し、一人一人の放射線治療が安全かつ確実に進められるよう取り組んでまいります。そして、これからも常に患者さんに寄り添ってまいります。がん患者の皆さんにおかれては、新型コロナウイルスの感染が拡大する中で、普段にもまして不安な日々をお過ごしのことと思いますが、どうかお心を強く持っていただき、日々の治療・療養生活を送っていただければと思います。
広島がん高精度放射線治療センター長 永田 靖