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広島がん高精度放射線治療センター 広島市東区二葉の里三丁目2番2号
TEL:082-263-1330(代表)/ 082-263-1314(事務ダイヤルイン)
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肝臓がん

肝臓がんに対する「放射線治療」

放射線治療の方針

肝臓がんは慢性肝炎から生じることが多い病態です。肝炎の中には、有名なウイルス性肝炎(C型肝炎・B型肝炎)とアルコール性肝炎、さらに最近では脂肪肝など代謝異常による肝炎も見られます。肝炎による慢性炎症によって肝細胞の破壊と再生が繰り返され線維化し、肝硬変となりますが、炎症が長引き肝細胞の遺伝子に傷が付くことでがん化すると言われています。

肝炎による発がんリスクは、C型肝炎で約100倍、B型肝炎で約50倍、アルコール性肝炎や脂肪肝など代謝異常によるものは約5倍とされています。

しかし、特にウイルス性肝炎は国レベルのサポート体制は充実しているので、発がんしたとしても約60%は早期の肝臓がんで発見されます。

早期の肝臓がんの場合、基本的には手術・焼灼療法が勧められますので、主治医より治療によるメリットとデメリットをよくお聞きになり決定されることが重要です。

早期肝癌に対する適応

早期肝癌に対しては、基本的には手術・焼灼術が選ばれますが、下記の条件を満たす場合は放射線治療を行う場合があります。

SBRTが有用と思われる症例の例
サイズ 3cm以下
部位 横隔膜直下や肝臓表面
脈管に接する
超音波で確認できない
併存疾患 肥満
出血傾向(抗凝固薬が中断できない)
透析中
その他 RFAを実施するにはサイズが大きい
手術拒否・RFA拒否・TACE拒否
手術やRFA、TACE後の再発症例

高度進行肝臓がんにおける門脈内の腫瘍栓

肝臓がんが進行すると、肝臓内に認める門脈という脈管内に浸潤することがあります。この場合、多くの症例で肝機能の低下も同時に認め、手術や内科的治療が困難な場合があります。

肝機能が改善し外科手術や内科的加療を可能にさせるために、門脈内の病変に放射線治療を行うことがあります。

病態や適応に関しては、主治医とよく相談してください。

転移性肝腫瘍に対する定位照射

大腸がんなどによる転移性肝腫瘍は外科手術が基本ですが、外科手術や内科的加療が困難な場合には定位照射を行うことがあります。

遠隔転移された肝臓がんの病態

また、遠隔再発された場合の肝臓がん治療の時も、がんにより症状が出ている部分にだけ、症状を和らげる目的で放射線を照射することがあります。骨への転移による痛みなどに対する放射線治療が代表的です。

HIPRACの特色

広島がん高精度放射線治療センターでは、広島大学病院と協同して、年間多数の肝臓がん患者さんの放射線治療を行っており、豊富な治療経験を有しています。

特に、早期小型肝臓がんに対する体幹部定位放射線治療 SBRTを行っております。

この体幹部定位放射線治療 SBRTは、放射線をピンポイントで照射する方法であり、手術や焼灼術が困難な場合や、高齢や合併症のある患者さんでは特に有用な治療法であり、良い治療成績が示されています。

また、高度進行肝臓がんの門脈腫瘍栓に対して肝機能維持に有用と思われる放射線治療も行っています。

様々な病態に対して「強度変調回転放射線治療 VMAT」を積極的に応用し、照射ターゲットへ線量を集中させ、かつ周囲の正常組織への影響を最小限に抑えた放射線治療を心掛けています。

【Topics】早期肝臓がんに対するピンポイントの放射線治療;体幹部定位放射線治療 SBRT

SBRTとは、高精度な照射技術を用いた、ピンポイントで1回に大線量の放射線を照射する治療です。正常細胞への影響を最小限に抑えて、病変だけを集中的に攻撃します。

当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いて、この治療を行っています。このため、従来よりも正常組織への影響を低減し、さまざまな形状の病変であってもその腫瘍の形に沿って、より集中的な定位放射線治療が可能となっています。

※MRI肝細胞相で黒く抜けて見える病変(赤い矢印)に対して、定位照射を行いました

【Topics】呼吸をしながらピンポイント照射:動体追尾照射

通常は呼気息止めを複数回繰り返しながら定位照射を行いますが、再現よく呼気息止めが出来ない場合は、呼吸しながら出来る方法(動体追尾照射)を検討します。

当センターには3台の放射線治療器がありますが、そのうちの1台の”Vero4DRT”では、腹壁に置いたマーカーと腫瘍周囲に留置された金マーカーの呼吸性移動を感知し関連付けることで、動く腫瘍を追いかけながら放射線治療をすることが可能です。

動体追尾照射を行うためには、肝臓エコー検査による金マーカー留置が必要です。当センターではJR広島病院消化器内科にご協力頂き金マーカー留置を行っています。

放射線治療の方法

  • 広島大学病院と広島がん高精度放射線治療センターは同じ治療基準を採用し放射線治療を行っております。
  • 放射線治療が必要な場合は、主治医(肝臓内科もしくは外科)よりご紹介頂きます。
  • 肝臓がんの放射線治療:定位放射線治療は外来通院を基本とします。

小型肝臓がんに対する放射線治療の線量や回数

原発性早期小型肝臓がん:40 Gy/4回(1回10 Gy)
転移性肝腫瘍:48 Gy/4回(1回12Gy)

※基本的には呼気息止め下にて定位照射を行いますが、再現よく呼気息止めが出来ない場合は、呼吸しながら出来る方法(動体追尾照射)を検討します。(前述)

※個々の患者さんの状況に応じて線量や照射方法を調整することもありますので、具体的な適応や放射線治療の方法については担当医よりお聞きください。

高度進行肝臓癌の門脈腫瘍栓に対する放射線治療

病変部へ通常1日1回、週5回、1回線量3 Gyで計 13回(総線量39 Gy)、もしくは一回線量4 Gyで計5回(総線量20 Gy)の照射を行います。

放射線治療に要する時間

1回の治療に要する時間は10-30分程度で、実際に放射線を照射する時間は数分間です。

放射線治療の準備から治療開始まで

治療計画用CTの撮影日や実際の治療の日は数時間の絶食(飲水は可)が必要となります。


診察

放射線治療の適応かどうかを判断し,インフォームド・コンセントが行われます。

オリエンテーション
30分程度

放射線治療の流れや注意事項をビデオやパンフレットを使って説明します。

腫瘍の呼吸性移動確認
30分程度

X線透視装置を用いて呼吸による腫瘍の動きを確認します。
この際、息止めの練習も行います。

固定具作成
20分程度

治療中に体が動かないよう固定具を作成します。

治療計画用CT撮影
10分程度
数日後

放射線の当て方をシミュレーションするためにCTを撮影します。基本的には仰向けで撮影しますが、CTを撮影した体位を毎回の治療で再現することが非常に重要となりますので、無理な体位とならないように枕の高さや腕の上げ具合等、気兼ねなくお申し付けください。

治療開始

治療は基本的に平日のみ行いますが、治療効果を高めるために休日でも治療をすることがありますのでご注意ください。尚、治療時刻は予約制となります。

フォローアップ

紹介元の医療機関と連携して経過を観察し、必要に応じて検査を行います。

放射線治療に伴う副作用・注意点

治療中に生じる有害反応はほぼありません。
治療後、一過性に肝機能が低下することがありますが、症状を認めず改善することが多いです。まれに、肝予備能がもともと低下している場合は放射線治療によって肝不全になることもありますので、照射前の適応には十分注意しています。治療後数か月、数年して起こりうる有害反応は、肋骨骨折(照射野内に肋骨が入っている場合のみ)、二次がん(極めてまれ)などがあります。

治療時の注意点

  • 呼吸による病変(病巣)の移動が大きい場合は息止め(吐いた時に止める)で治療をします。
  • 息止めの定位照射では、毎回の治療で頻繁に息止めを実施していただくため、息止めがうまくできないと治療に時間がかかってしまいます。そのため、事前に息止めの練習をして頂き、無理なく息止めが行えるよう調整いたします。
  • 照射中、スタッフは治療室より出ています。スタッフは操作室のモニタで常に室内を監視していますので、治療中気分が優れないときには、声を出す、手を振る、足を曲げるなどして合図を送ってください。
  • 治療中は治療台が高くなりますので、転倒・転落防止のためスタッフの指示があるまで動かないようにご注意ください。
  • 治療体位の目印として体に直接、線を書き込みます。線が消えないように剥がれにくいシールを貼ります。入浴の制限はありませんが、体を洗うときは強く擦らないようにしましょう。また、線が消えかけているときはスタッフまでお申し付けください。