定位放射線治療(stereotactic body radiation therapy: SBRT)とは小さな領域に多方向・多軌道からの照射を行うことで線量が集中した照射が可能な放射線治療法であり、いわゆるピンポイント照射と言われる照射技術です。この技術により、正常組織への障害を抑えながら、かつ病変そのものには高線量を照射することが出来ます。
治療に際して重要なことは、正確な患者固定法および毎回の治療前の照射野照合法の確立、体幹部治療ではさらに呼吸調整法の確立です。
我が国は体幹部放射線治療の先進国であり、特に非小細胞肺癌Stage Iを対象とした治療に関しては症例数も多く世界的レベルの研究が進んでいます。
脳転移に対するピンポイント照射
誤差1mm以下の高い精度で頭蓋内の病変部に高い線量を照射します。非侵襲的で痛みなどの苦痛は伴いません。治療回数は基本的には1日1回、3日間の予定です。
肺がんに対するピンポイント照射
体幹部早期肺癌(T1-2N0M0)に対する定位放射線治療は、腫瘍への照射線量の増加による局所制御率の向上によって手術に匹敵する治療成績を上げており、非常に効果が高い治療法です。当院では息を止めて照射をする場合と、通常の呼吸をしながら照射をする場合があります。
息を止めるピンポイント照射
体を放射線治療台の上に専用の固定具で固定させていただいた後、“アブチェス”という、呼吸による胸腹部の2か所の体動レベルを検出する呼吸センサーを用いて、患者様ご自身で呼気で息を止めていただき、体内での腫瘍の位置精度を確保してピンポイントで高線量を照射します。
呼吸しながらのピンポイント照射(動体追尾照射)
当センターに整備されました三菱Vero4DRTを用いると、腹壁に置いたマーカーと腫瘍周囲に留置された金マーカーの呼吸性移動を感知し、それぞれを関連づけることが出来るため、常に腫瘍の位置同定が可能です。従って、腹部の圧迫や呼気の息止めの必要がなく、通常の呼吸をしながらの照射が可能であり、患者様の治療中の負担は大きく軽減されます。